企業の社会的責任(CSR)を考える

投資家にとって“良い企業”とは……。
社会にとって“良い企業”とは……。
投資家にとっても、 社会にとっても“良い企業”はあるのだろうか。
これからの投資家は、“社会との関わり方”をしっかり考える企業を見極める必要が出てきました。
おカネから、環境へ、社会的責任へ。
投資の在りかたは、CSR(企業の社会的責任)をキーワードに、いま、大きく変わり始めています。

罪を犯す株式投資?
その昔、1920 年代のアメリカのことです。今でもそうですが、教会は信者からの寄進による莫大な財産を持っていました。その財産の運用に際し、多くの教会は、アルコール、タバコ、武器、そして賭博への投資を一切認めませんでした。信者からの浄財をそのような株式に投資して、お金をもうけることは、教会として許されない行為と受け止めたのです。信仰に基づいて投資先を制限したのです。実はこれがいま世界で大きな流れとなっている「社会的責任投資(SRI)」の源流のひとつといわれています。トリプル・ボトム・ライン 多くの場合、「お金」という物差しで見て評価が高ければ、投資対象になります。ところが、近年、会社が大きくなり、その行動が社会に対し大きな影響力を持ち、なかには大きな被害をもたらすことも出てきたところから、「たくさん」稼ぐではなく、「どう」稼ぐかを大切にする動きが投資の世界で活発になってきました。環境やCSR に配慮する企業を支援し、社会に対して不適切なやり方で利益を上げようとする会社をチェックしていこうというわけです。
このような投資行動を社会的責任投資(SRI)と呼びます。
ところで、SRI は実際どう行われているのでしょうか。一般的なSRI ファンドでは、まず、財務面での1次調査で投資対象候補先となる企業群を選びます。次に、それらの企業について、環境やCSR の面から2次評価を行い、投資しても良い企業を更に絞り込みます。
この作業をソーシャル・スクリーニングといいます。ここで大きな役割を果たしているのがトリプル・ボトム・ライン(TBL)の考え方です。ボトム・ラインとは英語で最終利益のことです。トリプルは、3 つですから、TBL とは3つの最終利益のことになります。即ち、会社を、財務、環境、社会的責任の3分野で評点し、それらの総合評点で投資判断をするのです。仮に、財務の面でどんなに評価が高くとも、環境や社会的責任で評価が低ければ、投資対象から外れることにもなります。株主行動主義 当たり前の話ですが、株式に投資することは「株主」になることです。SRI をするだけでも、企業に対し大きなプレッシャーとなりますが、それだけではモノ言わぬ株主にとどまります。そこで、環境やCSR をより進めるために、積極的に会社に要望を伝えるとか、株主総会で株主提案や議決権行使をするなど行動する株主が増えてきました。これらを称して「株主行動主義」といいますが、いま、世界で大きな流れになっています。環境やCSR を大切に思う株主が行動することで企業が変わるケースが増えています。
アメリカにドミニ女史というSRI の世界で大変有名な方がいます。株主行動主義の実践者でもありますが、彼女がSRI に取り組むきっかけはこうだったそうです。ニューヨークの証券会社で働いていた折、同僚の一人が隣の席で、大きな軍需契約を取る可能性の高い会社の株式をお客さんに買い推奨しているのを耳にした彼女は、突然、その会話に激しい嫌悪感を覚え、それを機に会社を辞め、環境やCSR に取り組む企業を応援するためのファンドを始めたというのです。初めは誰も相手にしてくれなかった彼女のファンドはいまではアメリカはもとより世界中で有名になっています。300 兆円の世界 ところで、SRI は実際のところ、どれほどの広がりがあるのでしょうか。ひとつの指標としてSRI の投資残高があります。ある統計ではアメリカで約250 兆円、ヨーロッパで40 〜 50 兆円もあるそうです。合計でなんと300 兆円レベルの規模です。東京証券取引所の時価総額が500 兆円台ですので、その大きさが容易に想像できます。日本では、SRI 関連の投資信託ファンドは4 月現在、28 本で残高が約2900 億円です。海外との格差の大きさに驚かされます。投資家冥利

日本ではCSR がブームです。環境やCSR の報告書を出している企業は800社を超えるそうです。ここ数年で急速に増えました。この勢いがいつまで続くか心配する向きもありますが、企業にCSR を求める声は世界の流れです。これからもますます大きくなると思われます。例えば、ISO という国際機関でCSR のあり方について世界標準を作る作業が日本も含め多くの国が参加して議論が進んでいます。2008 年中には完成します。同じISO が作った環境管理のISO14001 は日本では非常に盛んになりました。CSR の標準化はISO26000と呼ばれ、日本でもはやることになりそうです。

また、EU では政策レベルでCSR が議論されています。フランスの上場企業は、年次報告書に環境やCSR についての記述が義務付けられています。ドイツでも今年から始ります。このように、世界で企業がますますCSR に取り組むことになります。とすれば、投資家もその流れに乗り遅れぬよう、企業を見る3つの目(TBL)をしっかりと養う必要が出てきました。

地球社会を考えるとき大切なことは、環境やCSR に取り組む企業を「投資」の持つパワーを使って支援していくことです。投資家が変わることで会社が変わります。そして会社が変わることで社会が変わります。その目指す先は、持続可能な社会を築くことです。
そうなれば、投資家冥利に尽きることになりませんか?