モテカブ

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エコカブProject

Let's talk

1時間半にわたって森を案内していただいた後、ニコル氏の書斎のある「アファンの森事務局」にて、改めて対談をスタートした。鹿児島市の環境アドバイザーも務める末吉氏と、探検家としての活動歴も長いニコル氏は、さっそく日本の冒険家についての話題で花が咲いた。

ニコル:

植村直己(冒険家。マッキンリー世界初登頂後、消息不明)は僕の友人だけど、ああいうヤツには生きてほしかったんだよ。いいおじいさんになってさ。若くして死ぬ冒険家は尊敬しないですよ、僕は。カッコ悪いです。探検に行くのはいいですけど、ちゃんと帰ってくるのがカッコいいの。だから、アルピニストの野口健くんにも会うと、いつもいつも僕は「死ぬんじゃないぞ!」と彼に言うんです。「墓があったら、しょんべんかけてやるからな!」って(笑)。

末吉:

植村さんみたいな方がおじいさんになって、というのは、次の世代に伝えてほしいということですよね。

ニコル:

そうです。ちゃんと生きて、次の世代に伝えるべきだったんです。

末吉:

先ほど森で、視覚障がいを持った子どもが水を触って「生きてる」と言ったという話がありましたが、それも同じですよね。水の感触は、若い世代に伝えるべきこと。最近は川に入ったことのない子が多いんじゃないでしょうか?

ニコル:

そうなんだよね。なにが、どこが危険かわからないから事故が起きている。

末吉:

僕は鹿児島県出身で、鹿児島でよく環境の話をしているんですが、鹿児島の川を、水を、もっと触れるようにしようとよく言っています。

ニコル:

そうですよ。賛成です。魚が住める川こそ安全な川です。アユやサケ、カジカが住める川ね。コンクリートを張った川こそ危ないんだから。

末吉:

そうですよね。

ニコル:

この川(事務局の前を流れる鳥居川)は12年前、暴れて水が溢れました。この近くは川の周りに木が生えていますし、川底も自然のままでしたから、そう危険なことはなかったんです。しかし、この下流のほうの川岸にコンクリートが張られたところから水が溢れ、流木やら土砂が流れて、田んぼに入り込んだりして、そりゃあ大変だったんです。

末吉:

人間は機械や新しい技術を持つと、なんでもできるんだと早合点して、まんまと自然にしっぺ返しをされたわけですよね。木は自然の脅威を防いでくれたけれど、コンクリは防いでくれないなんて、人間は夢にも思わなかったことでしょう。

ニコル:

その後、川に工事が入ったんですが、コンクリはダメと、僕は工事を変えさせたんです。子どもが川で遊べない川は安全かい!と、何度も議論して。僕は工事をする人、労働する人を悪くは言わないです。その計画に問題があるんだと抗議しました。そうしたら、工事を担当する地元の建築会社の人が、安全な川にはなにが大事なのかとわざわざ勉強をして、結局、川底にコンクリを張るのではなく、石にしましょうと。工事が変わったんです。工事をやめさせたのではなく、僕は工事を変えたんです。現在、その建築会社とはすごく仲良し。僕たちの森に川をつくるのを手伝ってくれたのも、その会社です。

末吉:

それは素晴らしい! なかなか、そういうことは言い出せないですよ。

ニコル:

工事を防げなかった地域の人からは「ニコルが有名だからできたんだ」とか言われるんですけど、違う!!あなたはNOと言わなかったでしょ、と。名前が知られているから工事を変えられるなんて、日本はそんなに甘くないですよ。
  先日も、おばあちゃんがうちに来て頭を下げて「うちの孫は一日中、この川で遊んでます。ニコルさん、孫のためにありがとうございました」と言われました。

末吉:

僕は、銀行が環境保全に対して、もっとお金を出すべきだと、よく言っているんですよ。

ニコル:

ありがとうございます(拍手をして、頭を深く下げながら)。
  以前、アメリカも日本の河川の真似をしたんですが、それでアメリカは大失敗しているんです。日本の河川のコンクリート三面張り(川底と川岸を三面固める方法)は世界中でやっていると日本人は思い込んでいますが、違う。そんなのは先進国では日本だけです。むしろ、ほかの国は、自然に戻す方向に進んでいます。災害に強く、しかも豊かな自然にする川づくりの技術はあるのです。

末吉:

日本でも、銀行が建築会社にお金が回るようにしたいと思うなら、川のコンクリを全部はがして、もとに戻す工事にお金を使ったっていいんですよね、長い目で見ると。

ニコル:

そう。ローマは1日にしてならず、ですから。

自然が変わると人の精神も変わる。日本にもっと「議論」の場を!

末吉:

ところで、『モテカブ』は環境を考える企業に投資をする、ということを推進しているわけですが……。

ニコル:

温暖化に面と向かって「よくしよう」と対策を講じている会社は、だいたい成功していますね。省エネルギーですとか。ドイツもそれで成功しているでしょ。たとえば、暖房機などを製造するある会社は、(自社)工場の周りの自然を復活させています。それで株も長期的に見れば上がっています。
  また、社会貢献として木を植えることを推進している会社もありますが、ただ木を植えるだけではダメ。ちゃんと保護していかないと、植えただけでは育たないんですよ。木を植えるのは反対ではないけれど、ちゃんと調査と保護をする。これをしっかりしてほしいです。

末吉:

これからはエコロジーを大事にすることが、間違いなく会社を強くしますよね。エコロジーを壊すようなエコノミーはいらない。退場だと。

ニコル:

そのとおりです。
  それと、第1次産業を大事にしないとね。人が田舎で暮らせるようにしないとダメ。外国の材木やら、大根やらが安いと日本は輸入していますけど、あれ、ホントにいいのかねぇ? 経済のシステムがおかしいと思いますよ、僕は。第1次産業が健康になれば、まず景色がよくなる。治安がよくなる。人が住みたがるようになる。結果、観光もよくなる。それで、だれも大金持ちにはならないけれど、でも、健康とか信頼のほうが僕は大事だと思うなぁ。

末吉:

いまのお話は非常に言い得ていますね。モノを消費することを中心とした20世紀の生活が成り立たないことは、もうはっきりしています。モノに頼らない価値を上げていくことが大切ですよ。今日、森で過ごしたこの時間は、お金に替えられない価値があるわけですから。

ニコル:

この森は小さいけれど、若くて森で仕事をしたい人がやってきます。スタッフも、ここで少ない給料だけれども、子どもを育てて生活ができる。松木さん(アファンの森を管理する名物レンジャー)は森の知識が恐ろしいほどあるのに、我々と出会っていなかったら、森の知識が活かせない土木や郵便配達の仕事をするところだった。ゴルフ場をあれだけつくることができた日本が、教育の場にもなる、生きている森をつくれないなんて……。

末吉:

なんでも新しいことばかりに目を奪われて、ワンパターンで進むんじゃなくてね。先ほど森で、よく松木さんと議論をするという話をされていましたが、議論をするというのが大事ですよね。

ニコル:

日本の林業の神様と言われた、通称「ドロガメ先生」という人(森林学者。東大教授だった故・高橋延清氏のこと)は、ご存じです? そのドロガメ先生も、アファンの森に来ると「赤鬼(ニコル氏の愛称)と松木さんが、自然のなかでずっと議論をし続けていくことが大事だ」とおっしゃっていました。

末吉:

薩摩の言葉に「義を言うな」というのがあります。命令する人に対して、異論をはさむなという意味ですが、でも命令する人が間違っていたら、全滅しちゃう(笑)。日本は議論をあまり好まない国民性ですが、CSRの観点で言っても議論は非常に大事。さまざまな立場のステークホルダーがいるわけですから、それらの意見に耳を傾けて議論していく。それがCSRのいい姿だと思います。

ニコル:

この森の財団も、松木さんの後継者がいますから、ちゃんとその哲学が伝承していけば、戦争が起きない限り、僕らがいなくなっても議論は続いて、森も生きられると思います。森で働きたいという若者も増えていますから。彼らがちゃんと森で働ける日本にしたいなぁ。
  日本はね、南北に長く、土地に起伏があるし、こんな多様性に富んだ国はほかにないんです。土地に多様性があると、地域の文化にも多様性があります。だから、日本人には知恵があるんです。健康な体と自然に培われたことによって素晴らしい知恵を持ったのですから、自然が変われば、日本人の精神までも変わっちゃうよ!

末吉:

ニコルさんはとっても情熱的だし、最近、温暖化対策のために林業を復活させようという動きも出てきていますが、もっとそこにインパクトを与えたいと思うんですよ、僕は。ニコルさんはライフワークとして森を守られていますが、それをしたいと思ってもなかなかできない人も多いでしょう。僕も応援しますから、ニコルさん、選挙に出られません?

ニコル:

うーん。よく言われるんですけどね。毎日、国会議事堂に行くのが……。森で遊べなくなっちゃうし(笑)。

末吉:

たしかに(笑)。あんなに素敵な森をお持ちになっていると、なかなか。

ニコル:

いや、森は財団のものですし。僕の森というよりもむしろ、僕自身が森のものなんですよ。だから僕は、ずっと森のなかで生きていくんです、最後まで。

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