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エコカブProject

今回は、事業活動と社会問題の解決とが密接な関係を持つ、株式会社ベネッセコーポレーションの福原賢一氏をお招きしたゾ!教育、語学、生活、介護の分野で事業展開し、CSRに力を注ぐビジネスの現場からナマの声を聞いてほしい。
社会のニーズの発見は、ビジネスチャンスの宝石箱ぢゃ〜!

撮影/笠島友

ふくはら・けんいち/1951年4月、岡山県生まれ。京都大学法学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。その後、取締役グローバルリサーチ担当、金融研究所長を経て、野村リサーチ・アンド・アドバイザリー株式会社の代表取締役社長に就任。2004年、企業理念に共鳴し、株式会社ベネッセコーポレーションに入社。同社取締役兼執行役員専務、グループ会社の株式会社ベネッセスタイルケア代表取締役社長を務めた後、2007年、現職。ベルリッツインターナショナルインク会長兼CEOも兼任する。

―今回、対談が行われた株式会社ベネッセコーポレーションの東京本部は、ベッドタウン「多摩センター」に位置し、自社ビルの20階にある会議室からは、緑の多い多摩市が一望できる。そこから見える絶景に感動した末吉氏は、福原氏と2人で窓の外をながめながら対談をスタートした。

末吉:
(敬称略)

東京に拠点を置くとなると、都心にオフィスを構える企業が圧倒的に多いじゃないですか。また、どうして、ここに拠点を置くことになったんですか?

福原:

東京都内は、良くも悪くも情報が多く集まる場所ですよね。その情報に飲み込まれないよう、少し都心から離れた場所から事業を行おう、という会長の福武總一郎の考えで、ここに決めました。

末吉:

なるほど。

福原:

それに、ここらへんはベッドタウンですから通勤も楽なんです。東京に向かう電車の通勤時間は混みますが、逆方向になりますから。そういった配慮もあってのことでした。

末吉:

社員のみなさんは、通勤ラッシュに遭わずに通勤できますもんね。すばらしい考え方だと思います。

福原:

学校もあって、緑もあって、ここに生活をしている人たちがたくさんいる。そういった環境のなかで、私どもの「教育」や「生活」に関した事業をするというのは、非常にマッチしているのではないかと。

末吉:

たしかに、そうですね。

福原:

ベネッセという社名の「Bene(よく)+esse(生きる)」もそうですが、社屋があるこの立地も、企業理念である「よく生きる」を表しています。ベネッセのCSRと認識されている活動と、事業内容がかぶっているものも非常に多いと思いますね。

女性雇用率の高さは、歴史的必然。
社会のイノベーションは生活の周辺から起きる!

福原:

ベネッセは、よく女性が活躍していると言われます。ですが、歴史を振り返ると、岡山で株式会社福武書店として始めた頃は、大卒男子を採用しようとしても、なかなか集まらなくて、その一方で、大卒の女子は就職先がない状態だったんです。それで創業当時から、中核メンバーに女性を多く雇用してきたわけです。そして、その女性社員たちが結婚や出産を経験して、やむを得ず退職しなくてはならない、という事態に直面したとき、必然的に制度をつくったというか、制度化しないと組織が回らなかったともいえます。
  ベネッセが育児休業制度をつくったのは13年前です。この制度を活用して多くの女性社員が仕事と育児を両立させていますが、彼女たち自身が親として経験してきたことが事業として仕事に活かされているんですね。現在の当社の女性社員比率は約60%、さらに女性管理職比率は約32%ですが、その数値は歴史的必然だと。

末吉:

社会のイノベーション(革新)は、周辺部分から起きる、といいますけど、本当にそうですよね。大都会の大企業中心のところからは起きない!
  いまのお話を聞いて、アウトドアウェアメーカーのパタゴニアという会社を思い出しました。パタゴニアの本社の敷地内には託児所があるんですが、好きなときに我が子に会うことができるんです。これも、創業者イヴォン・シュイナードさんの妻であるマリンダさんに子どもができて、働きながら子どもを育てるにはどうしたらいいんだという話から始まったこと。それなら会社のなかに託児所をつくれば、ほかの女性社員のニーズにも対応できるじゃないかと。社会を体現するニーズに会社が応えているということです。

福原:

以前、証券会社時代の知人がベネッセを訪れたとき、お茶を出したのが男性社員だったというので、非常に驚いていましたね。「ものすごいカルチャーショックだった」と(笑)。でも、そのとき手が空いていたのが、たまたま男性社員だった、というだけの話なんですけどね。私も、長らく証券業界にいたので、驚く気持ちはよくわかるんですけど。

末吉:

日本の金融業界は男社会ですからね。

福原:

男性社員でいえば、当社で昨年、育児休暇を取ったのは7人、今年はこれまでで5人が取ったでしょうか。3カ月ほどの休暇を取って職場に戻ってくると、面白いもので、彼らの視点がまったく変わっているんです。その彼らの新たな視点を仕事にフィードバックして、事業に役立たせることができる。教育や生活などに関連した事業だからこそ、そのフィードバックも大きいんだと。

ビジネス一辺倒は危険。
自身の仕事や働き方を客観視する姿勢が結果、リスク回避に

福原:

当社の会長である福武は、現代美術に対する興味がとっても深いんですね。
  ベネッセは、瀬戸内海にある直島で「ベネッセアートサイト直島」として、自然のなかにアートをつくりあげるプロジェクトを行っているのですが、会長の福武は、週末はよく、この直島で過ごしています。
  なんていうんでしょう。福武は事業に対して非常に情熱的である一方、明けても暮れても事業一辺倒、ではないといいますか。ベネッセという会社だけがすべてであるという人間ではないんですね。
  そう! 事業の現場以外に自分の居場所があるということです。ですので、事業に対して熱い思い入れを持って語る部分と、ベネッセ本体を冷静に客観視している部分とがある。それはいいことではないか、とじつは思っているんです。

末吉:

いま、おっしゃったなかで、2点、大変共感する部分がありました。
  まず、自分の居場所がべつにある、ということ。おそらく今後、日本で働く人にとって、重要になってくるのが、「マルチキャリアパス」です。ひとつの企業で終身雇用されるのもいいですが、竹の節のように、勤務先や働く場所を一定期間で変えていったり、または1週間の使い方を変えていくといった働き方です。Aという会社に入ったら、ずっとAの会社の理論だけで生きていくような考え方は、破滅すると僕は思うんですよ。

福原:

なるほど。

末吉:

それと、自分のビジネスを客観視するという点。これ、非常に大事なことだと思います。
  企業で事件や事故が起きるのは、やむを得ない部分もあります。しかし、これだけ企業スキャンダルが多いのは、事故処理にミステイクをしている、ということだと思うんですね。会社の恥はオーナーである自分の恥だと思い込んだりして、日本の社長陣は、あまりにも会社と一体化しすぎるきらいがある。会社のことをすべて社長が知っているなんてことはないわけで、ベネッセさんだって、100%いいことばかりではないはずだと思うんですよ。
  たとえば、平気で自分の会社の悪い部分を口外したっていいのではないでしょうか。企業の内側ばかりを見ていると、判断も鈍りますしね。だから、福原さんのおっしゃったとおり、自分の会社に対して客観性を持つことは、これからの企業のあり方としても、働く人のあり方としても、非常に重要でしょう。

福原:

働く人のあり方でいえば、こんな話があります。ベネッセは、株式会社ベネッセスタイルケアという介護事業も展開しており、現在、有料老人ホームは120拠点を超えています。その介護事業を始める際、社内に「公募・青紙制度」という、やりたい仕事に自ら手を挙げられる制度があり、それを活用した希望者が想像以上に集まったんですね。もう、周囲があわてちゃうくらいに(笑)。

末吉:

すばらしい! 介護をやってみたいとか、人の役に立ちたいとか、じつはだれもが思っていますよね。でも、それを挙手してやりたいと言えるんだという職場の雰囲気や、お互いを認め合う文化があるとしたら、大変すばらしいことですよね。これまで一緒に仕事をしてきたメンバーにとっては、この職場がイヤなのかと、大いなる侮辱なのかもしれないけれど(笑)。これは経営方針、社風なのでしょうかね。

福原:

ベネッセの企業理念に「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを事業化する」というものがあります。その理念と実践とが融合できているんだと思いますね、自然に。それでいて、きちんと利益を上げている。それが誇りです。
  民間営利企業ですから、売り上げを上げることはもちろん使命なのですが、それ以前に、社名を背負って事業をしていますから、理念と実践がマッチした事業であることが大切だと考えています。逆にいえば、理念と実践の2つがマッチしていない新規事業はこれまで失敗してきていますし、マッチした事業は、不思議としっかり育って根付いてきているんです。

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