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「環境報告書」には、論理とビジョンのあるコミットメントを

――環境などに配慮した企業に投資したいというSRIの視点で、これから株式投資を考える『モテカブ』読者も多いんですね。そこで、環境報告書を読む際に、この企業は環境に関してしっかり考えているかどうかは、どんなポイントを見ればわかるか、國部さんの視点を教えていただけますか?

國部:

一番わかりやすいのは、社長の言葉です。レポートはたいてい、社長自身が登場して自社の環境対策について語っているものが多いんですけどね。一般的なことしか語っていないのか、それとも、社長が自分自身の意見としてきちんと語っているのかどうか。具体的に指標や達成方法をコミットメント(約束や義務の明確化)して、マネジメントをしている会社は強いと思います。

末吉:

よく言っていることなんですけど、「地球に優しい」なんていうヘンな言葉はもうやめてほしいですよ。先生がいま、おっしゃったとおりで、企業であれば、情緒的な表現ではなくて、社長はもっと明確に問題意識を持って、具体的な目標を立てるべきですよね。サラリーマンの成れの果てで社長になった、というような意識はダメ。トップとしての自覚や責任を相当持つ必要がありますし、ビジョンを持たないと。
  海外の企業の場合、社長としての自分と、いち消費者としての自分をうまくだぶらせて表現するのが上手ですが、日本の企業は良くも悪くも、そこをはっきり分けてしまいがち。社長たるものは公の身分だという感じでね。会社の立場で社会の問題に対して意見を言うなという風潮があります。

國部:

たしかに、ありますね。

末吉:

海外は逆ですよ。社会に対するしっかりとした意見があるから、CEOとして立派なのだという考え方。無機質ないちポジションとしての社長というのは本当によくないと思います。そういう社長に限って、いざというとき、一番悪いことをするんだから!

國部:

(笑)

末吉:

いやいや、ホントにそうですよ。

國部:

たしかに、海外の社長ははっきりしていますよね、ホントに。以前、日本とアメリカ、ドイツの企業のトップマネジメントとのシンポジウムの司会をしたことがあるのですが、その際に「ステークホルダーのなかで、だれが一番大事ですか?」と質問したら、海外の企業の経営トップは全員「従業員だ!」と。はっきり口をそろえましたよ。日本の企業は、すべてのステークホルダーを大切にする、というスタンスですから、これ、イメージからすると逆ですよね?

末吉:

これは、「従業員だ」と言ったときに、ほかをすべて捨てて従業員だけだと言っているのではなくて……。

國部:

ええ、ええ、そういうことです。

末吉:

従業員を大切にすることが、じつは株主や消費者も大切にすることになるのだという論理、ストーリーがしっかりと下地にあるということですね。

國部:

まったくそのとおりです。

末吉:

それに、海外の場合、株主でも、株を朝買って夕方売るような株主と、10年、20年持ち続けている株主を同じ扱いで考えるなんて、おかしいという考え方。当然、長期で持ってくれている株主を大事にしている。それを鑑みることもせず、一様に「すべてのステークホルダー」と答えているのだとしたら浅い。考えの浅い発言は誤解を生みますよ。
――話を報告書に戻しますが、海外の環境報告書も日本同様、社長が誌面に登場して語るタイプが多いのでしょうか?

國部:

そうですね。海外とひとえにいっても千差万別ですが、CEOの言葉は重要です。それに、日本は写真をいっぱい使った見た目重視ですし、データや結果が中心。海外の場合は、目的や方針などが多く、文字で解説する部分が多いと思います。

末吉:

たしかに、そうですね。

國部:

それと、私が注目する海外の企業のいいところは、編集方針がしっかり書かれていること。CSRといっても、書き切れない量があるので、「このように私たちは考えて、重点を絞って書きました」とかね。CSRのなかでも、なにを重要視しているかという方針を明確に打ち出しています。日本で編集方針が書かれたものは、まださほどありません。
  日本の企業でも環境保全に関しては重要視しているところが多いですが、それ以外の社会問題に関するCSR活動となると、なにを重要視しているかはあまり書かれていないことが多いです。

末吉:

僕の表現で言えば、海外の企業は先に問題意識ありき、なんですよ。なにを問題意識として考えているから、それに対して我々はなにをしたくて、なにをすべきで、具体的にこうやっていく、という流れ。ところが日本の企業は、この前半部分がすっぽり抜け落ちている。「地球に優しい企業」と言いたいから、環境対応します、という流れ。でも、地球が抱える環境問題はいろいろあるわけで、そのうちのなにを自分たちは一番大切にしているのか、ということにまったく触れない。

國部:

あれ、わざと触れないようにしているんでしょ。価値判断を入れたがらない。環境問題も社会問題もすべてやっています、全部大切にしています、と言いたい。プライオリティ(優先順位)を付けたくないんでしょうね、きっと。

末吉:

本当にね。べつな言い方をすれば、すべてのことに対して、うっすらとしか考えていないということなんだけど。それが良くも悪くも、日本の特徴。課題解決のために、全体を引っ張っていく力や、主導権を争う議論のシーンでは本当に日本は弱い。ただ、いざ決まったら、ダントツで成果を上げられる。自分では決められないけれど、決めてくれたらトコトンやる、っていう。

一部の部署だけでなく、企業活動すべてに環境への対策を!

――最後に、今後の日本企業の環境対策はどう行っていくべきでしょうか?

國部:

環境と経済をどう結びつけるか、に話は尽きるんですが、いまの日本では、まだまだ本業の枠外で環境に関する活動が行われていることが多いと思うんです。環境対策部とか、CSR推進部とかっていう一定の部署で環境保全活動をしているだけ。そうではなくて、製造部も人事部も財務部も経理部もマーケティング部も、すべての部署で環境への配慮をしていかないと、環境と経済は調和しないんです。しかし、そういったマネジメントはかけ声だけでは進みませんから、マネジメントの制度から変えていく必要があると思いますよ。

末吉:

いまおっしゃられたことを違った表現にすると、本業で環境対策をしよう、ということです。日常の自分たちのそれぞれの仕事に環境対策を入れていこう。利益の一部を、環境保全活動をする外部の団体に寄付して環境対策してくださいとするだけではなくて、自社の環境対策室がやるだけでもなくて、どの部署の人もやろうよ、ということですよ。

國部:

ただね、いくら企業活動によって環境の影響があるといったところで、そう企業は動かないんですよね。なぜなら、企業は環境を保全する組織ではなくて、営利を追求する組織だから。
  ですので、環境に配慮することで、どれだけ企業の利益になるのか、ということが明確に提示できる仕組みをもっと世の中にアピールしていくこと。それが、私の仕事だと考えています。

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