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高く飛ぶには深くかがめ!世界の主流は長期的な時間軸で発想すること

枝廣:

未来を語ることを含めて、最近、時間軸が短くなっていますよね。世界的にそうですが、日本はとくにそんな気がします。目の前のことしか考えられなくなっている。環境問題のようなものは、短い時間軸では解決できないですし、短期的にいいことが長期的にいいとは限らない。本当に長期に解決しようとすると、短期では悪化する必要もある。よく私は「高く飛ぶには、深くかがめ」というのですが、かがんでいるときに評価されちゃうと、高く飛べなくなってしまう。だから、いま大事なことは社会の時間軸を伸ばすことだと思うんですね。
日本にSRI(社会的責任投資)のエコファンドが入ってきた際、シンポジウムに参加したんですが、そのとき私は「すぐに利益が得られるものじゃなくて、30年間、なにも言わずすべて企業の裁量に任せて託すから、30年後に投資した分を返してくれればいい、そういうエコファンドをつくってほしい」と言ったのですが、エコファンドの人には「それこそ、あり得ない」と(笑)。でもね、社会の構造を変えるには、長期的な時間軸に広げていく必要がありますよね。

末吉:

それで言えば、年金基金の運用においては20年後、50年後と先を見据えた投資が必要になってきていますが、カルパース(アメリカ・カリフォルニア州公務員退職年金基金)では、パーペチュアル(永久)だと言っているんです。50年、100年でなく、もう永遠に視点を伸ばして考えないとダメだと
言っている。これは極端でも、それでも1年、2年のスパンで考えるなんて、もうナンセンス。もっともっと長い目で見ようじゃないかと。これ、いま世界では本当に主流になってきていますよ。短期視点にどんどんなっているのは日本だけ。世界では逆に長期のビジョンを大切にしています。

枝廣:

オーストリアでも、選挙と選挙の間を伸ばそうという動きがあるんですって。短期間で選挙をすると、短期で成果を上げられることしかしなくなりますよね。そうではなくて、ちゃんと結果が出るまで、たとえ短期間で状況が悪化したとしても、それが許される評価軸に変えていこうとされています。

末吉:

あえて日本と海外の比較でいうと、僕が強く感じるのは、海外の人は、極めて本質的で、かつ単純な疑問を平気で口に出すでしょ。我々、日本人はなんとなくわかったふりをして、こんなことをいまさら聞くのは恥だとか、バカだと思われるんじゃないかとかね。
でも、単純な疑問ほど極めて本質を突いているものですよ。それをきちんと出し合って議論することが大事ですね。温暖化の話も極めて単純。さきほど枝廣さんが表現されたように、31億トンしか吸収できないのに、72億トン出し続けるのはどうなのか? ダメだよね、というのは当たり前。問題を細分化させて、制度のいいところ、悪いところを議論したり、どういう制度であるべきか、と制度に焦点を当てて語りがちだけど「そもそも、なんのためなのか」を共有して、もっと議論しないと、事の本質を見失います。

枝廣:

やっぱり、一人一人が考える力を取り戻さないといけないと思いますね。テレビの弊害もあると思いますが、考えることをやめちゃってる人があまりにも多い。いま、世の中の流れとして、「感じることが大事」だったりするでしょ。感性なんていって。みんな、感じることはするけれど、考えることをしない。「こっちのほうがよさそうだから」という感性で決めてしまう。選ぶ力、決める力がいろんな問題の解決につながっていると思うんです。しかし、いまの日本には、考えることがダサいという風潮もあって、考えることを評価しない。
投資家も、だれかがこれがいいと言ったから買う、売るではなくて、自分で選んで決める力を持たないと。変化をつくり出す側と翻弄される側に分かれてしまっている。翻弄される側にいたら、つまんないですもん。

末吉:

いまのお話、非常に大事だと思うんですけど、そもそも考えろと言ったって、情報がないと考えられないですよね。ですから、社会のリーダー的な立場にある人が、メディアも含めて、一般の人が考えられる情報を提供していくことが重要ですよね。安易に答えを提供するのではなくて、考えられる材料を与えることだと。世の中の大きな出来事であればあるほど、複雑さがあるわけですから、いろいろなことを議論しないと結論は出ないんですから。

日本を変えるためには、伝える力のある人を社会に増やしていく

―――では、そんな日本の社会をどうやって変えていけばいいんでしょうか。

末吉:

市民社会がもっと目覚める必要がありますが、当面は市民社会の代表選手が役割を担うしかないですよね。それで少し時間かけて、社会を育てていくというか、それしかないのかな。本当はね、政界や学会のエリートがもっと積極的に意見を言って行動していくべきですけど。
―――そういう意味でいくと、アル・ゴアさんは政治家ですし、社会的なインパクトを与えましたよね。

ホントにね。あれで温暖化問題について加速しましたよね。

枝廣:

日本の置かれている現状を考えると、温暖化で言えば、日本が京都議定書の約束を果たせなかったとき、海外から排出権を買うことになりますよね。そのとき、どれくらい買うことになるのかというと、2兆〜3兆円の税金が日本から出ていくという予想があります。
それに、エネルギーの生産量がピークに達してしまうという問題もあります。2015年の段階で日本が必要とするであろう天然ガスの需要量と、契約できている購買量を比較すると、かなりギャップがあるんです。北米や中国もそうですけど、どこも天然ガスを買うことに必死になっていますから、日本は買えない恐れがあるんです。温暖化でお金が出て行き、エネルギー価格が上がってお金が出ていき、しかも必要なエネルギーが日本には流れない。
そう考えると、お金の流れを変えて、日本のなかでエネルギーや食べ物をつくっていくことは、日本が生き残るための絶対必要な条件になっています。政治家は日本の将来を考えて、どういう仕組みでいくかを話さないといけない。ところが、現状維持をしようとして、そういう活動をしている人の足を引っ張っています。やはり、考えられる人を社会のなかに増やしていくこと。これが大事だと。

末吉:

それは、言えてますね。

枝廣:

そうだ! 末吉さんと私の共通点をもうひとつ挙げるとしたら、伝える力かな。温暖化の問題など、難しく言える人はいっぱいいますが、末吉さんのお話はとってもわかりやすいし、私もよくそう言ってもらえます。ゴアさんが、映画でやっていた講義、ありますよね? ゴアさんはNGOと組んで、あのプログラムを使って1000人に伝えられる人を1000人つくるプロジェクトをやって、実際に育てたんです。私も同じように、伝えられる人を育てるプロジェクトを立ち上げ始めているんです。

末吉:

いいですね。私も協力しますよ。

枝廣:

やっぱり、コミュニケーションで変えていかないとね。1000人が1000人に伝える「1000×1000」プロジェクトで100万人。これ、なかなかいいでしょ。

 

 

 

 

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