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今月の特集

株式会社化して5年。
上場企業をIRという側面から支えてきた名古屋証券取引所のこれからにご期待ください。

「売買手数料は、自由化でどんどん下がってきています。こうした環境にあって、いかに効率のいいビジネスを展開できるか。その大きな鍵を握っているものが情報料です。かつては、情報とは『無料』という感覚が強かった。でも最近では、有益な情報は有料であるというとらえ方も浸透してきています。私たちもここ数年で、取引参加者としての証券会社に買っていただける情報を提供できるまでになりました。今後は、この動きをより加速させていきたいと考えています」

取締役社長 畔柳昇氏(くろやなぎ・のぼる)

証券不況真っただ中の船出

 「名古屋証券取引所が株式会社化したのは、5年前。それまでは旧大蔵省OBがトップになるという世界でしたが、株式会社化を契機に、民間会社からトップをという声があり、私に白羽の矢が立ったという経緯があります。でも当時は証券不況の真っただ中。日経平均株価も7000 円台にまで落ち込んだ頃です。景気もなかなか回復しないという、社長に就任するには、あまりいい条件ではなかった。
 また、その頃は名証としては570社ほど上場していたのですが、東証や大証の重複企業が名証での上場を廃止するという波も来た。おかしなもので、同業他社の1社が上場廃止を決めると、ほかの企業も横並びで廃止を決めてくる。結果として、400社くらいにまで減ることになりました。ですから社長に就任して最初の2年くらいは、本当にきつかった……。
 社内改革を進めていったのも、この頃です。かつての『お役所体質』を改めなければならない。このためにも、社内の『若返り』を図ることにしました。30 代、40代の社員をどんどん登用していったのです。残念なことに、費用、待遇面にもメスを入れざるを得ませんでした……。でも、この株式会社化後の改革が、いまになって効を奏してきた。自慢になってしまうかもしれませんが、社員は本当によくついてきてくれた、頑張ってくれたと誇りに思っています」
「私たちのセントレックスのコンセプトは『上場のファーストステージになる全国区市場』というもの。しかし誤解なきように申しあげておきたいことは、ほかの市場で上場がかなわなかった企業の受け皿ということではありません。決して他市場に比べて審査基準が甘いわけではないのですから」

どこよりもチカラを入れてきたIR

 「名古屋証券取引所では、私が社長に就任する以前から『名証IRエキスポ』を開催しています。今年で14回目になりますね(本誌8〜11ページで紹介)。最初は60社ほどの参加でしたが、現在では140社近くが参加してくださるビッグイベントになっています。こうしたイベントは多くの場合、広告代理店などに委託して、いわゆる『丸投げ』にすることが多いのですが、私たちはいまでも社員総出で企画し、また運営・参加しています。こうしたことは経費削減の意味合いよりも、社員にとっては、名証のアイデンティティを自分たちで運営しているという誇りの表れだととらえていただきたいと思っています。
 証券取引所も、かつてのような『場立ち』の世界ではなく、電子取引に変わりました。こうした流れのなか、証券取引所は、東京にあればそれでいいじゃないかという意見もあります。しかし、それは違う。私は、売買だけが証券取引所のすべてではないと思っています。たしかに売買だけを考えるなら、取引所はひとつあれば、それでいいのかもしれません。ですが取引所の使命は、企業のディスクロージャーを支えることも、売買と同じくらい大切なんです。
 東京の場合、企業数も多いだけに、よほど注目を集める企業でない限り、なかなか満足のいく情報提供ができないと思います。新聞記者もそこまで手がまわらないのが実情でしょう。でも、名古屋の場合、どの企業でも毎年2回、こちらで20分ずつ時間をとって発表することができる。このことは投資家にとっても、大きな判断材料になるはずです。こうした情報発信機能を向上させていくことも、証券取引所の大きな使命であり、名古屋証券取引所としては、なによりも大切にしていることなんです。
投資家の意識からすれば、早く儲けたいという心理もあるのかもしれません。しかし、私個人の意見としては、株とは本来、企業のファンになって、その表れとして投資するということではないかと思っています。だからこそ事業内容をよく見てもらって、これなら将来の期待が持てる。あるいはこういうリスクが考えられるなということをしっかりと理解してもらいたい。そして長く保有してほしい。これが理想だと思っています。そのためにも証券取引所が率先してディスクロージャーをお手伝いするべきだと考えているのです。IRエキスポが、そのなによりの証明ですね。
 昨今、IRという言葉は、社会にも定着してきましたが、私どもがIRエキスポをはじめて開催した頃は、まだ一般的な言葉ではありませんでした。いまでも、企業によっては、広告・宣伝と同じように『費用対効果』の側面でIRをとらえているところもあります。でもIRとは特定の商品の広告・宣伝とは明らかに性格の違うものです。IRとは投資家に対する啓蒙なんですから。
私がよく企業のトップの方々に申しあげることは、担当役員や担当者に任せるのではなく、トップ自らが投資家の前に立って、自分の経営哲学を披瀝(ひれき)してほしいということです。
投資家の方々は、いろんな判断材料を欲しがっています。それは決して数字ばかりとは限らない。たとえば、トップが自信を持って話をしている。その話し方に共感した。あるいはルックスがいい。服装のセンスがいい。そんなことだって、企業のファンになる大きな要因になり得るのですから。
 この先、名古屋証券取引所としては、いかに上場企業を増やすかということ。取引参加者を増やすかということ。こうしたことが大きなテーマになってきます。幸いこの5年間で下地づくりはできたと思っています。証券取引所の発展とは、いかに付加価値を提供していけるかどうか。では付加価値とはなにか。そのひとつがIRではないかと考えています」
現在31社の企業が上場している新興市場の「セントレックス」。昨年(2006年)までの新興市場ブームは落ち着きを見せたものの、上場社数は確実に増えてきておるんぢゃ。セントレックスのポイントは、「企業の成長性」。これは数字の面ばかりではなく、事業内容への期待感や社会への影響力なども含まれておる。JASDAQ、マザーズ、ヘラクレスとは違った、個性ある市場として投資家からも注目を集めておる市場ぢゃ。

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