| 石川: |
2007年の夏までは、新興国の実力は正当に評価されていませんでした。というのも、アメリカが揺らいだらダメだと思われていたんです。しかし、最近はBRICsの経常収支が黒字です。アジア通貨危機のときは赤字だったが、現在は4400億ドルの黒字。GDPに対する比率はBRICs全体で約6%。日本は4%で多いといわれているが、これを上回っている。中国やロシアは9%に達している。外貨準備高は中国が1兆4000億ドルで、日本より5000億
ドル多いんです。外貨準備のGDPに対する比率とか、経常収支のGDPに対する比率から見ても、ものすごく抱えています。こういうものを見たら、「アメリカがこけたら新興国もダメになる」なんてことは考えられません。 |
| 中井: |
中国も、相当バブルのようなことが言われて、10月(2007年)の共産党大会で政策転換のような動きも出てきましたが……。 |
| 石川: |
2008年8月の北京オリンピックが終わったら反動があるという話もあります。だけど、中国の国内事情からいったら、成長率を落とすわけにいかない。国内でもって、いろんな、やらなくちゃいけないものがたくさんある。北京オリンピックの5倍くらいのプロジェクトがこれからあり、しかもお金も持ってます。東京オリンピックの時代の日本の場合には、国際収支がつねに景気の天井を押さえていたんですよ。景気がよくなると輸入を増やして、経常赤字になっちゃう。経常赤字になっちゃうと引き締める、といった具合に。でも中国には、そういう壁がないんですよ。いま、景気過熱を心配して金融を引き締めていますが、それでも年10%見当の成長は続いている。アジアはずいぶん潤っています。そういう面から言うと、なんでもかんでもアメリカの影響を受けるという考え方は、かなり緩めることができると思うんです。 |
| 中井: |
いままでは、たしかにアメリカ発のグローバリズムが新興国市場を中心に、世界をけん引してきたと思います。しかし、このグローバリズムによって、中国でもロシアでも格差の問題が出てきています。富める人は富んで、儲かっている企業は儲かっているのに、儲からないところはまったく儲からないといった現象が出てきたのです。そして同時に、これに対する疑問みたいなものも出始めたんです。たとえば、フランスのサルコジ大統領は、「グローバリズムで働けば、もっといい給料がもらえるよ」と言っていたんですが、結果、暴動が起きている。もっとも格差が小さかったはずの日本でも、自民党が選挙で負けてしまいましたよね。 |
| 石川: |
たしかに中国でも、都市と農村との所得格差が増えて、その是正が共産党の悩みとなっていますが、そのために使うお金があります。日本の外貨9000億ドルは大半がアメリカの国債なので、思いどおりには使えないのに対
し、中国は使えるからです。また、産油国は、1バレル30ドルが、いま90ドル台になると、この増加分だけで、産油国全体で約2兆ドル増えます。これは日本のGDPの2分の1、中国の4分の3近くに相当するほどの金額です。また、OPECだけでも約5000億ドル増えます。サウジもいまは大幅黒字で、お金が余っている。アメリカに依存しなくても必要なお金があるのです。 |
| 三原: |
1997年のアジア通貨危機は、東南アジアは貧しくて外資が出ていってしまったから不況になった。しかし、それから10年経って、逆にいまではアジアにしか、もうお金はないんです。外貨の大部分は中国やロシアが持っているわけです。様変わりしました。中国や東南アジアも、以前はまともな市場がなく、1997年の中国の時価総額は、言葉は悪いですが、世界から見たらゴミ同然だったんです。それが、いまや日本を追い越そうという勢い。時間をかければ、最初は大したお金でなくても、大きく増えるということです。 |